谷川連峰 小出俣川左俣マチホド沢 超絶大ナメと100m大滝をめぐる沢歩き(上越国境南面 赤谷川支流)

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投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2017年11月02日 (木)~
メンバー
単独行
天候
コースタイム
川古温泉手前駐車スペース(40分)千曲平(20分)10m大滝(25分)大ヒラナメのセン下(35分)100m大滝下(60分)千曲平(40分)川古温泉手前駐車スペース
コース状況
※ 本文をご参照ください
難易度
Google Map
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  • おとな女子登山部

感想コメント





大ヒラナメ



玄人好みの多彩な山容が展開される谷川連峰のなかにあっても、訪れる人がほとんどいない小出俣おいずまた流域。
マチホド沢は小出俣川の左俣に相当する魅力溢れる渓です。
そこに人知れず広がる“大ヒラナメのセン”は一見の価値ありとされる隠れたスポット。
幻想的な水の絨毯は、想像していた以上に素晴らしいところでした。






  2017/11/2(木) 晴時々曇

川古温泉手前駐車スペース[12:33]…千曲平[13:13/13:26]…10m大滝[13:47]…大ヒラナメのセン下[14:12]…100m大滝下[14:51/15:10]…千曲平[16:14/16:27]…川古温泉手前駐車スペース[17:06]







■ 最高の遊び

武田信玄はさまざまな岐路に立たされた時、トイレにこもり誰にも会わず考えをめぐらし重大な決断していたと言われます。
居城である躑躅つつじヶ崎館には、お風呂の残り湯で流す水洗エコトイレが設置され、アロマなお香の香りが絶えないようになっていたというのは結構有名な話。
かの信玄公をみならい、私も次の山を選ぶときはトイレにこもるようにしています。

いつものようにトイレで登山体系のページをめくりながら、

 “寝坊して昼スタートでもOKで”
 “魂を揺さぶられるような物凄い景観があって”
 “広くて無料の駐車場があって”
 “アプローチがなるべく短くて”
 “地獄の下山がなくて”
 “帰りに安い温泉があって”
 “誰も来ないようなところで”
 “たぶん生きて帰ってくることができて”……

そんな遊び場がないかな~と物色していると、ふとある文章に眼が止まりました。


“しばらくゴーロ状を行くと急に沢幅が広がり、10~15mの沢幅一杯に石の絨毯が200mあまり続いている。「大ヒラナメのセン」と呼ばれている所だ。思わず歓声がもれる。”


お~!200mの石の絨毯!
“歓声”とか、登山体系がいつになくこんな情緒的な表現をするくらいだから、きっとここは......


いいところだ!


という訳で、今回の目的地はここに決定!かなりの癒しが期待できそうです。

しかも、駐車場から<林道アプローチ1時間+遡行1時間=わずか2時間>で行けてしまう!
そのうえ30分ほど先には3段100m大滝まであるという!
さらにマニアックすぎて、平日はおろか夏の土休日でもまず人に会うことはない!
(ま、いつもそんなところしか行っていないのですが......)

こんな素晴らしい遊び場が残されていたとは!!!

日帰り往復5時間ほどで楽しめる濃密プランとしては“最高の遊び”と言えるかもしれません。
(帰りの立ち寄り湯には夜間割引まであるし......)
11月に入り、本気モードの沢登りの季節ではなくなりましたが、紅葉の沢歩きならまだまだ?楽しめるところ。
今年最後の沢遊びは、谷川連峰小出俣川左俣マチホド沢
知られざる超絶大ナメと大滝は深く心に残るものとなりました。


小出俣おいずまたは、谷川連峰上越国境稜線南側の大渓流赤谷あかやの支流。
国道17号三国街道沿いにある猿ヶ京温泉の北にある川古温泉の少し手前で、赤谷川に注ぎます。
赤谷川は谷川連峰屈指の豪快さを誇り、赤谷川本谷を筆頭に、上流部の各支流、さらには金山沢や笹穴沢など魅力溢れる渓が広がりますが、小出俣川流域を訪れる方はほとんどおらず、それだけにとても静かな沢歩きを楽しむことができます。
アプローチには赤谷林道から北東に派生する伐採用の林道を使用。
ベースとなる千曲せんげん平は、川古温泉から歩いても小1時間の距離です(登山体系では“ちくま”とルビがふられています)。
千曲平は二俣にもなっており、小出俣川はここで左俣と右俣に分かれます。

この流域の最高峰は小出俣山(赤谷山)。標高1749.1m。
小出俣山を中心として、南向きに半円形の尾根が両方向に伸びており、東に阿能川岳や三岩山、西に十二社峰といった三角点峰が連なります。
当然のように登山道はなく、稜線上は主にハイマツや石楠花に覆われた激ヤブ世界。
登山体系では、“まさに死闘と呼ぶにふさわしいブッシュこぎが待ちかまえている”という記述があり、これを読んだだけで絶対に行きたくない!と思ってしまいます。

もっともこの辺りは残雪期にこそ登られる隠れた好ルート。
小出俣山を直接目指す方はあまりいないと思いますが、東に鎮座する阿能川岳(標高1611.3m)は谷川岳の好展望台として、春によく登られる初級バリエーションルートとして知られます。
また小出俣山より北には、川棚ノ頭を経て俎嵓まないたぐら山稜がオジカ沢ノ頭まで続いており、魅惑的なルートを提供してくれます。
小出俣山は分水嶺でもあり、小出俣川だけでなく、赤谷川支流と谷川本谷の源頭にもなっています。
頂上からほぼ真南には大ビノ尾根が千曲平まで延びており、右俣である大穴沢と、左俣であるマチホド沢を分けています。
今回の目的地は、そのマチホド沢中流部にある大ナメと大滝なのです。




■ 秋枯れの林道を歩く

川古温泉手前の駐車スペースを出発したのは、相変わらず遅い12時半頃。
小出俣川沿いの林道入口は広場になっており、10台ほどは停められそうです。
まずは未舗装の林道を、入渓点である千曲平までのんびりと歩いていきます。


 ↑ ぬかるみの多い林道でした

最初、原生林が広がっているのかと思ったら、杉林も現れます。
あとで知ったことですが、ここは人工林を自然林に誘導することを目的とした試験地にもなっているとのこと。
林業関係者の許可車輌が入っており、チェンソーの音が遠くに響いていました。
小1時間ほどで、千曲平橋へ。


 ↑ 千曲平橋

この辺りは千曲平と呼ばれる平坦地です。
もっと広い河原のようなところを想像していましたが、鬱蒼とした森のなかの平地といった感じのところでした。
橋の手前左にある広場で入渓準備。
今回はまたここに戻ってくるので、アプローチウェアとアプローチシューズは置いていくことにします。
右岸に赤テープが続いているので、なんちゃって作業道を辿りながら、適当なところで入渓。


 ↑ 入渓点

さすがに水は冷たい!
普段使わないスキンメッシュソックスを履いていても、4月初めと同じような冷たさです。




■ 意外に立派な10m美瀑

まずは20分ほど平凡な沢歩き。
森の中で時々秋らしい色彩が輝きを放つと、思わず足が止まってしまいます。










 ↑ 最初は単調な沢歩き

やがて瀑音が近づいてくると、顕著な10m滝が見えてきます。


 ↑ 最初の滝が見えてきました

意外にも結構豪快に水を叩き落とす立派な美瀑です。






 ↑ 顕著な10m滝

左壁を登れそうですが、水が冷たいので、迷わず高巻き。
右岸巻きは容易。踏み跡も比較的明瞭でした。


 ↑ 左壁の様子


 ↑ 巻き道は比較的明瞭


 ↑ 落ち口はトイ状でした

まもなく右岸から松ホド沢が出合います。


 ↑ 松ホド沢出合

松ホド沢は2段5m滝が一つあるだけの小さな沢ですが、下降の際に利用価値があるようです。
渓はここで右に大きく曲がり、いよいよ大ヒラナメのセンが現れます。


 ↑ 沢は大きく右へ曲ります


 ↑ いよいよ大ヒラナメのセンです




■ 大ヒラナメに感動!



チョーきれい!


確かに思わず歓声がもれました。










 ↑ 大ヒラナメのセンに感動!

どこまでも果てしなく続くような大ナメは壮観!
“こんなところがあったとは!”という衝撃を受けます。
200mの大ナメと言えば、有名なのは奥秩父東沢釜ノ沢にある“千畳ノナメ”。
ちょっと趣は違いますが、この“大ヒラナメのセン”も大変見事な世界です。
これだけの世界がほとんど世に知られずにいることがとても不思議。
躍動感溢れる水の絨毯は、癒しというよりも、何か心に活力を与えてくれるような気がしました。


 ↑ 折角なので記念撮影

大ナメに続いて、釜をもったナメ状小滝が2つ現れます。












 ↑ 釜をもったナメ状小滝が続きます

その先で左岸より20mナメ滝をもって大ビノ沢が出合います。


 ↑ 大ビノ沢出合


 ↑ 大ビノ沢も遡行価値あります

大ビノ沢は小出俣山直下に詰め上げる渓で、10mと20mクラスの滝が続くそうです。
続くナメ状滝12mは落ち葉で滑りやすいので注意が必要。




 ↑ ナメ状滝12mは滑りやすい

右岸の灌木を頼りに巻き気味に越えました。
その先はまたナメがわずかに続き、小センノ沢が出合います。






 ↑ 小センノ沢出合

本流にはここで8m滝がかかります。


 ↑ 意外に端正な8m滝

右壁を登れます。


 ↑ 右壁の様子

左岸には古いトラロープもあり、高巻くこともできます。
今回帰りはここを巻き下りましたが、下に向かって伸びる灌木頼りのトラバースとなり、ちょっと危ないところ。
下降する場合は面倒がらずにロープを出した方がよいかもしれません。

8m滝を越えると、渓はゴルジュっぽく狭まったゴーロ帯へ。
たくさんの大岩の間を縫うように進んで行きます。




 ↑ ゴーロ帯

ゴーロ帯を抜けると、いよいよ3段100m大滝が見えてきます。


 ↑ 大滝が見えてきました




■ 大滝は迫力満点!



デカっ!


この大滝も圧倒的でした!










 ↑ 圧巻の3段100m大滝

今まで比較的穏やかだったのに、ここでいきなり豹変する渓相がとても印象的。
おとなしいと思ってたのにドSでした、みたいな感じです。
ともあれ、この大滝の登攀はかなり難しそう。
登山体系によると、

“大滝の一段目は流れの右に取付き、濡れたフェースを15m登る。さらに30m登り、二段目に向かう。ここからがポイントだ。流れの左壁は大ハングとなっているので右の垂直のフェースに取付く。5m直上してバンドから左に5mトラバース。ハング下にハーケン2本を打ち、頭を押さえられながら右斜上する。ハング上にハーケンを1本打ち込み、回りこんでハング上のバンドに出て、きびしいバランスでふたたびトラバースを5mすると、飛沫のかかる右壁に出る。ここから細かいホールドを捜しながら20mで二段目落口に立つ。三段目には10mのチムニー滝があるが、流れの中に豊富なホールドを見出して直登する。”

これは無理......。
ちなみにこの大滝の上には、逆S字状の150m大スラブ滝や、“小ヒラナメのセン”と呼ばれる神秘的な150mスラブがある模様。
来世でクライマーに生まれ変わったら、チャレンジしてみたいと思います。

またこの大滝手前は、センノ沢出合にもなっています。
大滝の手前で岩を割ったような狭さで滝を落として出合います。
上信越では“滝”のことを“セン”や“ゼン”と表現します。
滝が多い沢だからセンノ沢と呼ぶのでしょう。いわゆる“滝沢”です。




 ↑ センノ沢も急峻です

センノ沢は、『沢登り銘渓62選』(山と渓谷社)では中級ルートとして紹介されています。
出合の2段10m滝に続き、20m滝が立ち塞がるとのこと。
こちらも登攀的な遡行を強いられそうです。


 ↑ 中間尾根はセンノ沢の登路


 ↑ 折角なので記念撮影






      





■ 帰りはナメラン

今日は大ナメと大滝でお腹いっぱい!大満足です!
わずか1時間半ほどの遡行でしたが、見所満載!
このコースは、まず人に会わないので、ある意味“デート沢”として大変オススメです。
帰りは“ナメラン”を楽しみながら、あっという間に千曲平まで戻ってきてしまいました。












 ↑ 帰路はナメラン




今回帰りの立ち寄り湯は、“奥平温泉 遊神館”。



⇒ 奥平温泉 遊神館の情報はこちら



国道から少し離れたところにありますが、雰囲気の良い町営温泉でした。




最後までご一読いただき、有難うございました。

※ HTMLを使用したレポート掲載については許可を得ております。

※ 画像サイズはスマートフォンで見やすい大きさに設定してあります。

※ 滝表記については、『沢登り銘渓62選』(山と渓谷社)を参照させて頂きました。



フォトギャラリー

小出俣川マチホド沢は見所満載の渓でした

入渓点 水は冷たいです

意外に立派な8m滝

大ヒラナメのセン①

大ヒラナメのセン②

大ヒラナメのセン③

大ヒラナメのセン④

大ヒラナメのセン⑤

水の躍動感に心洗われました

大ビノ沢出合

3段100m大滝

大滝にて

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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